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  <title>自室で聖書を読む女の子に朗読して貰いたい散文</title>
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  <description>文章保管庫です</description>
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    <item>
    <title>合わせ鏡の使者、レム睡眠時のペナルティ</title>
    <description>
    <![CDATA[<font size="4"><br />
　その迎えは、魔法を使わなかった日の午前３時にやってくる。<br />
<br />
　合わせ鏡の中からやって来た悪魔はやれやれと嘆息を吐きながら、<br />
　小生意気な私に向かって薬指を差しだした。<br />
<br />
　慣れっこの事でもお互いに怖い。<br />
　黒く尖ったそれを喉までくわえ込み、第３関節を境に思いっきり噛み千切る。<br />
　ケミカルな紫色の体液に溺れかけながらも、私はそれを余すことなく飲み干した。<br />
<br />
　カーテンが揺らめく。<br />
　外は深紅の空。<br />
　私は胃の中で生成された指輪を吐き出すと、それを股間に埋め直して夜に飛び込む。<br />
<br />
　狩りは既に始まっていた。<br />
<br />
　空翔る少女達は、思い思いの武装を手にしながら、いつ終わるとも知れない戦いに身を投じ、<br />
　歓喜の雄叫びを上げている。<br />
　明け方までの不死と恍惚に酔いながら、私は鋼鉄の鎌を振りかざした。<br />
<br />
　血の雨が降る。<br />
　瓦礫が美しく舞う。<br />
　劫火が照らす。<br />
　屍が泣く。<br />
<br />
　嬌声と陵辱と略奪と暴力と破壊と冒涜と狂騒と姦淫の宴。<br />
　おおよそ罪悪というのモノの限りを尽くしたような血みどろの舞。<br />
　遠くに望む月食は、覚醒を待つ私達の目蓋に似ている。<br />
　この空間で出来ないことは、無い。そう思わなければ、待っているのは緩慢な死だ。<br />
<br />
　魔法は使わなければならない。<br />
　悪夢に犯されながら学んだのは、その一つだけ。<br />
　契約は、少女の死まで継続する。<br />
　一度でも奇跡を望んだ者は、その法則に縛られるしかない。<br />
<br />
　――――――３時間が経った。<br />
<br />
　運良く生き残ったのは、ちょうど２人。<br />
　お互い、奪った肉と体液の所為で下っ腹が醜く膨らんだ上に、<br />
　手袋と靴を履いている以外はほとんど裸だった。<br />
　顔は原形を留めていない。<br />
　それでも笑顔だと解ったのは、お互いの発する吐息がマイナー調ではなかったからだろう。<br />
<br />
　飛び出す。<br />
　折れた足で、バランスを愉快に崩しながら、重心をかけて、ただ前に。<br />
<br />
　　がつ、ん　。<br />
<br />
　目の奥に散ったサイケなパターングラフィックを、遠い気持ちで見つめ、思い、倒れる。<br />
　彼女は私の下腹部からキラキラと輝く指輪を取りだし、勝ち鬨を上げた。<br />
<br />
　「おめでとう」<br />
<br />
　祝福すると、彼女は女神のように美しく笑って、空へと上っていった。<br />
　赤い瞼が開く。<br />
　瞬時に私の意識は分解と再構成と転移を行い、<br />
　果たして少女趣味な我が家の２階へと戻ってきた。<br />
<br />
　時刻は８時５２分。<br />
　今日が日曜日で有るはずはない。<br />
　だけれど重い生理がある。<br />
<br />
　私はシーツをだらしなく引き寄せ、本日最初の魔法をかけた。<br />
　おやすみなさい。</font>]]>
    </description>
    <category>単発ショート</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/%E5%8D%98%E7%99%BA%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88/%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B%E9%8F%A1%E3%81%AE%E4%BD%BF%E8%80%85%E3%80%81%E3%83%AC%E3%83%A0%E7%9D%A1%E7%9C%A0%E6%99%82%E3%81%AE%E3%83%9A%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3</link>
    <pubDate>Tue, 24 Apr 2007 00:22:34 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>God knows...</title>
    <description>
    <![CDATA[<font size="4"><br />
　――結局は、そうなのだ。<br />
　いくら時間を重ねたところで、タダのワガママで貫き通せないモノは存在する。<br />
　どうしようもなくても、直視できなくても、否応なく目の前に展開する悲しい未来。<br />
<br />
　&hellip;&hellip;かみさま。<br />
<br />
　私は祈りというモノに特別な思いを抱いている。だからこんな瞬間でも貴方に祈ろう。<br />
　人の思いは、どんな観点からしてみても、解析できない、<br />
　割り切れない特別な単位である、と私は信じている。<br />
<br />
　なのにどうして。世界は、時に平気な顔をしてすれ違いを生むのだろう。<br />
　悲劇のヴォルテージと言うモノが世界を動かす大事なファクターだというのなら、<br />
　せめて私以外の所からそれを奪っていって欲しかった。<br />
<br />
　&hellip;&hellip;かみさま。<br />
<br />
　貴方の力を試してはならないと、皆が言う。<br />
　それは祖母の皺に刻まれた笑顔からも、冷笑的な怠慢教員からも等しく教えられたことなので、<br />
　今更それに逆らおうとは思わない。<br />
　全知全能な貴方の手を借りると言うことは、世界に致命的な歪みを生んでしまうのだろう。<br />
　だから、こうして貴方に問いかけてみる。<br />
<br />
　&hellip;&hellip;かみさま。<br />
<br />
　貴方は、今日という日が来ることを知っておられたのだろうか。<br />
　今までの幸せな時は、全てこの時を頂点に構成されたマボロシだと考えていたのだろうか。<br />
　あるいは、別れの哀しみを知った上での哀れみだったのだろうか。<br />
　私には解らない。<br />
　問いかけることに意味を見出す私を、貴方が笑うかどうか、知る由もない。<br />
<br />
　&hellip;&hellip;かみさま。<br />
<br />
　香油と茨がこの手になくとも、こうして忘我していられると言う状況が、<br />
　彼と貴方の最大の功績だと私は思う。<br />
　これから呪うべきモノは、貴方が耕してきた異郷の地に置いていくとしよう。<br />
<br />
　――かみさま。<br />
<br />
　本当は、あなたの存在など信じたくはなかった。その心情は今でも変わらずに持ち続けている。<br />
　私の弱さを笑うだろうか。それを知る誰かに訊いてみたい。<br />
　全知全能、絶対不可侵、唯一無二の存在が、どんな音を立てて笑うのかと。<br />
　私を。私に。どうか。</font>]]>
    </description>
    <category>単発ショート</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/%E5%8D%98%E7%99%BA%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88/god%20knows...</link>
    <pubDate>Mon, 23 Apr 2007 22:56:07 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>最初で最後の少女、雨を往く</title>
    <description>
    <![CDATA[<font size="4"><br />
　魔法遣いを辞めたかった。<br />
　それは、熱病に浮かされた子供が涼気を求めるくらい、正当な衝動だったと思う。<br />
<br />
　深夜の公園で遊び歌う彼らは、皆あどけない笑みを浮かべながら世界を呪っていた。<br />
　輪の外で１人佇んでいると、仲の良かった子がにこりと笑って私を招き入れる。<br />
<br />
　「おいでよ」<br />
<br />
　水色のスモックを羽織った彼女は、実年齢が外見年齢の５倍以上ある。<br />
<br />
　ここは時間を裏切った者達の社交場だ。<br />
　赤いセーラー服を着た私同様、何かに成長を肩代わりさせている。<br />
<br />
　世界の代償を退けるために費やした力は、膨大を越す膨大な量。<br />
　――それこそ世界を逆転させられる程度に、蓄えられてきた。<br />
<br />
　彼らは遊ぶ。<br />
　縛られない。<br />
　踊る。<br />
　全てを否定する力を持ちながら、野放図にそれを流し続ける。<br />
<br />
　――この街は、あと一週間で滅び去るらしい。<br />
　術式に使う水銀の雨は、それだけで数多くの悲劇を生んだ。<br />
　私は１人で何度も泣いた。<br />
　彼らは私を見て少し泣いた。<br />
<br />
　そして今――私は剣を突きつけている。</font>]]>
    </description>
    <category>ベリーショート</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88/%E6%9C%80%E5%88%9D%E3%81%A7%E6%9C%80%E5%BE%8C%E3%81%AE%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%80%81%E9%9B%A8%E3%82%92%E5%BE%80%E3%81%8F</link>
    <pubDate>Sat, 21 Apr 2007 01:34:59 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>赤色魔法少女の昼下がり、蒼との会話</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><font size="4">　<br />
</font><font size="4"><br />
<br />
　――多分恐らく間違いなく、魔法というモノは誤解している。<br />
<br />
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【汎用少女型運命起爆装置・ラムダ】<br />
<br />
</font><font size="4"><br />
<br />
　退屈というバイオリズムは何にも増して苦痛な時間である、と何処かのエライ人は言った。</font><font size="4">だからきっと、こういった状態にならないためにあらゆる手を尽くせるのが、アクティブな人間というモノのボーダーなんだろう。</font><font size="4">南風の吹き抜ける昼休み、これ以上ないほどに綺麗な脱力ポーズを取った私に、誰も話しかける者は居ない。みんな栄養摂取やら、彼氏自慢やら、弁当自慢やら、この先の予定自慢やら何やらで忙しく、この逆方向に美しいメタモルフォーゼを称えようともしない。「退屈で&hellip;&hellip;死にそう」呟く声にも力などなく、そのまま消えるに任せ、樫の机にキスをする。埃の味しかしなかった。「めめー」知らない人が聞いたら正気を疑いたくなるような呼びかけが、耳を打つ。恥ずかしながら、それが私の名前だ。「&hellip;&hellip;日野原めめめ、只今セーフモードで運行しております。御用の方は、」「焼きカレーパン買ってきたぞ」――首を返すと親友、佳奈未ゆう子が、アツアツのお宝を手に微笑んでいた。後光が。透過光が。パライソ的ファンファーレが彼女のために奏でられた。ハレルヤ。「たーべーさーせーてー」「手ぐらい動かせバカモンが」素敵な笑顔と冷たいお言葉。その黄金比率が眩しい。涙が出るぜ。「らびんぐゆー！！」「はは、ケツ噛んで死ねよ」そう言いつつ、餌付けライクにパンを千切って付きだした口の中へ１つ２つ。人肌フラットの温度が優しい。「旨いか、めめ」「旨いです、めめ」「語尾るな、メンドクサイ。つーか、今日はヘビィに鬱っとるな」「精神的に生理が遅れている状態であります隊長」「そいつぁーめでてえ。花なら贈ってやるから達者で暮らせよ」「&hellip;&hellip;ノリが良すぎるっす、佳奈ちゃん」「何の文句があるか」分針風速、秒針一周、そう言った単位のサビが少しずつ落ちていくのを私は感じた。ともだち。佳奈ちゃん。宝物だ。「愛してるぜ、ゆう子」「指輪の１つでも渡してから言うんだね」「プルタブで良いっすか」「それで殴られたいんならな。あと、次に名前で呼んだらコロスから」「夫婦なのに！！」「離婚だ」ぺらぺらとバイト情報誌をめくりながら、鋭角メガネをくくりと上げる佳奈ちゃん。つれない漫才で消費した時間を取り戻すが如く、無言で情報を摂取。採取。付箋。黙読。「佳奈ちゃーん」&hellip;&hellip;スルー。「佳奈未さまー」&hellip;&hellip;携帯。「ゆう子ちゃ」&hellip;&hellip;殺意。「――何だ、ケツ女。バットなら後でねじ込んでやるから今は黙れ。ウザイ」「や、あの、コミュニケーションというか、質疑というか、国会的答弁をですね」「つまらんことを言ったら蹴るぞ？」「ガチですか」「ガチです」優しい最後通牒を突きつけられて、さびしい私は後悔と雑念と恐怖で理想的なテンパイに到る。「ええと、ええと」汗だくになりながら、数巡後。発言する。「――空は、死にますか？」佳奈未ゆう子の目は一瞬、殺人的に見開かれ――そのまま、ゆっくり閉じていった。「青いモノは、死なない」静かな、絞りきるような声に、反応が遅れる。「&hellip;&hellip;え？」「それぐらい知っときな。めめ、空は死なない。海も死なない。だが、青に争いを挑むモノは、みんな時間を喪って死ぬ。死にたくなければ青になれ。殺したくなければ青くなれ。守りたいモノがあるなら青いモノを知れ。それがアンタに許された力だ」真っ直ぐ私を貫く瞳。そこには、茶化した好意も澄んだ悪意もなく、ただ意志が統合されたイロのみが映り込んでいる。それは、光子分解されても曲がりそうにない、彼女の固定したベクトルだった。「天使になれよ、日野原めめめ。あたしは、そう望んでいる」</font></p>]]>
    </description>
    <category>試作</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/%E8%A9%A6%E4%BD%9C/%E8%B5%A4%E8%89%B2%E9%AD%94%E6%B3%95%E5%B0%91%E5%A5%B3%E3%81%AE%E6%98%BC%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%82%8A%E3%80%81%E8%92%BC%E3%81%A8%E3%81%AE%E4%BC%9A%E8%A9%B1</link>
    <pubDate>Fri, 09 Feb 2007 17:49:36 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>バースデー・ジョブ</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><font size="4"></font></p>
<p><font size="4"></font></p>
<p><font size="4">　</font></p>
<p><font size="4">　一月下旬の寒い夜、私達は通い慣れたファミレスで、ささやかなパーティを開く。</font></p>
<p><font size="4">　角っこの席で歌われる黄色い声のハッピーバースデーに目をやる人は、まばらだ。</font></p>
<p><font size="4">　店員さんもお馴染みのこの行事で、私達は遅い年明けを実感する。</font></p>
<p><font size="4">　「あゆー、おめでとー」</font></p>
<p><font size="4">　「ありがとー」</font></p>
<p><font size="4">　ぶふ――――っと吹き消したロウソクの火が、年々増えていくのが何とも哀しい。</font></p>
<p><font size="4">　ハイテンションなだけの拍手と、何度も繰り返すありがとうの中で、<br />
　理不尽にロウソクを突き立てられたアップルパイが「早く食えよ」と呟いているように見えた。</font></p>
<p><font size="4">　簡単なプレゼントを貰い、ジョッキを煽り、手軽な悪口を叩き合った後で、誰かが言う。</font></p>
<p><font size="4">　「これであゆも２９か――」</font></p>
<p><font size="4">　しん、とする空気。</font></p>
<p><font size="4">　「&hellip;&hellip;信じらんないよね、まだ中学生みたいなのに」</font></p>
<p><font size="4">　中学生言うな。背は１５０あるんだぞ、これでも。</font></p>
<p><font size="4">　「あたしたち、そろそろ親子とかに見られるんじゃない？」</font></p>
<p><font size="4">　「かもね&hellip;&hellip;中身は一番おっさんなのに」</font></p>
<p><font size="4">　おっさん言うな。競馬も競艇もやってないんだぞ。</font></p>
<p><font size="4">　「そろそろ旦那が欲しい時期よねー」</font></p>
<p><font size="4">　全員、溜め息。</font></p>
<p><font size="4">　地方在住の仲良し組が、みんな揃って行き遅れ。<br />
　笑うに笑えない状況だけど、これでも明るく生きている。</font></p>
<p><font size="4">　そんな連帯感を深めるための定例行事が、今日という日のバースデーが持つ意味である。<br />
　んむ。</font></p>
<p><font size="4">　「なんだおめーら、呑みが足りないんだよう！！」</font></p>
<p><font size="4">　自慢のハイトーンヴォイスで繰りだしたアオリに、皆が目を丸くしながら、<br />
　それでも焼け付いた笑顔でジョッキを鳴らし始めた。</font></p>
<p><font size="4">　気持ち、ここだけドイツのビアホールになったような錯覚が、私達を襲う。</font></p>
<p><font size="4">　ソーセージとビールとシャンパンだけで構成されていくオーダー。</font></p>
<p><font size="4">　ブラックリスト寸前である私達対策に、今日の酒類が尽きることはない。</font></p>
<p><font size="4">　「あたしのどこがいけないって言うのよ――ッ！！」</font></p>
<p><font size="4">　「おれのカレーが食えねぇってのか――ッ！！」</font></p>
<p><font size="4">　「滅びろヒューマ――ンっ！！」</font></p>
<p><font size="4">　怒号と悲鳴と皿が飛び交う中、私達はこうして新年を祝う。</font></p>
<p><font size="4">　目を逸らしていても避けられないものだから、手荒く、厚く、歓迎する。</font></p>
<p><font size="4">　&hellip;&hellip;完全に意識を失う前。</font></p>
<p><font size="4">　親友が、堪らず声を掛けてきたウエイターに、</font></p>
<p><font size="4">　「うるせえ、てめーらそれでもロイヤルホストか――ッ！！」</font></p>
<p><font size="4">　と言った場面を記憶した。</font></p>
<p><font size="4">　ああ、このパーティは今年でおしまいになるな、と確信した。</font></p>]]>
    </description>
    <category>連ネタ</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/%E9%80%A3%E3%83%8D%E3%82%BF/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%87%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%96</link>
    <pubDate>Tue, 16 Jan 2007 16:42:22 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>３００１０１</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><font size="4">　&hellip;&hellip;遠くで、３度目のアラームがけたたましく鳴り始めた。<br />
　緩慢な意識の中で、携帯の停止ボタンに手を掛ける。<br />
　起床予定の時間を、１５分近く過ぎていた。<br />
　ゆっくりと、カーテンから漏れだした光に目を細めながら、邪魔な毛布をはね除けて、思う。<br />
　――なんて、ひどい朝。<br />
　昨夜の酒に灼かれた胃が、普段活動しない午前７時というシフトに拒否反応を示している。<br />
　それを説き伏せるかのように、解れた髪に手を差し入れ、祈るように呟いた。<br />
　&hellip;&hellip;朝だ。<br />
　今日は学校がある。あの子を送り出してやらないと、何もかも始まらない。</font></p>
<p><font size="4">　「あれ、ヒカリさん」<br />
　キッチンには、既にあの子――宍道アイが立っていた。<br />
　ただ湯を沸かしているだけの状態だが、それでも痛恨の不覚を取った気分になる。<br />
　母親失格だ、私は。<br />
　「待っててね。今コーヒー入れるから」<br />
　お気に入りのカップを２つ、テーブルに置いた。<br />
　それだけの仕草でも、今日は機嫌が良いんだなだと察することが出来た。<br />
　喜びたい。本当なら。<br />
　でも、この子が上機嫌な理由を知っていると、とてもそんな気分にはなれなかった。<br />
　無邪気な笑顔の下には、生きる意志を昏い感情に固定してしまった、無垢で愛しい弱さがある。<br />
　そして、それを抱き締めてしまったら、今の私達は終わってしまうのだ。<br />
　憂鬱になる。<br />
　何が親子だ、馬鹿馬鹿しい。<br />
　結局私達は、利害関係をすり合わせているだけの他人に過ぎないんじゃないか――。</font></p>
<p><font size="4">　この街における吸血鬼と殺人鬼の定義は、戸惑うほどに簡単だ。<br />
　吸血鬼は記憶と存在を奪い、殺人鬼は記憶と存在を抹消する。<br />
　それがどんな方法によるか、どれほどの数を手に掛けたかは問題ではない。<br />
　上記２つの略奪行為を行った人間は、原姿教会の名に於いて公然と淘汰される。<br />
　そう言う意味では、紛う事なき蔑称なのだ。<br />
　存在を長らえたモノは幾つもの称号を得るが、<br />
　結局それは名前という呪文の末尾が伸びるということ以外、何も生み出さない。<br />
　撒いた恐怖の分だけ忌み嫌われ、後に存在自体の履歴まで消え去ってしまう。<br />
　人口も資源も減少の一歩を辿るこの街に於いてすら、<br />
　それは余りにも空しい最後であると、私は夢想する。</font></p>
<p><font size="4">　「今日だよね」<br />
　ふと発しただけの言葉に、心が痛む。<br />
　「今日、狩りに行くんだよね」<br />
　確認の言葉。同時に、虚言を許さないと言う冷たい意思表示。<br />
　「情報を回収したのはボクだから。当然、『今回は』、行く権利があるわけだよね？」<br />
　笑っている。ただそれだけのことが、こんなに悲しいなんて。<br />
　「&hellip;&hellip;ええ。混成チームを組んで、深夜０時に浜松町付近で待機。貴方の参加も認めます」<br />
　そっかと呟いて、ブルーベリージャムがたっぷりと塗られたトーストを口にくわえた。<br />
　食べる？　と聞かれたけれど、到底そんな気分になれず、辞退した。<br />
　ただ黒い水面だけをゆらゆらと揺らす。<br />
　ココアになるんじゃないかという勢いで砂糖を入れたインスタントコーヒーは、<br />
　重そうなレスポンスを返すだけで一向に食欲をそそらない。<br />
　吐き気がした。<br />
　いや、思えばあの時から。<br />
　ヒトを守るために殺人鬼になろうと考えたあの日から、<br />
　そんなモノは封印されてしまったのかも知れない。<br />
</font><font size="4">　私は迷っている。この子は迷わない。<br />
　多分、そんなモノすら復讐する相手に奪われてしまったんだろう。<br />
　彼女はきっと大丈夫だ。<br />
　取り返しの付かないところまで間違ったとき、彼女ならきっと、躊躇無く私を殺す。<br />
　――その為の家族だ。</font></p>
<p><font size="4">　行ってきますという言葉を聞いて、錆び付いた玄関を飛び出したあの子を見送ると、<br />
　私はある番号の留守番電話にをメッセージを入れた。<br />
　届く確率は５分。届かなかったら&hellip;&hellip;、私は腹を括るしかない。</font></p>
<p><font size="4">　「裕貴さん、私です。あの――今夜、どこかで会えませんか？」</font></p>]]>
    </description>
    <category>E.G.O</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/e.g.o/%EF%BC%93%EF%BC%90%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%91</link>
    <pubDate>Wed, 06 Sep 2006 18:59:08 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>Ａ１００１０１</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><font size="4">　この幻想的な景色は覚えている。夕方の教室に１人佇む私と、それを包むカーテンの波。<br />
　黒板に書かれた「ｅｖｏｌｕｔｉｏｎ」という単語が妙に可愛く、妙に可笑しい。<br />
　傾いた光源から生み出されるこのハイコントラストな風景は、<br />
　セロハンを貼った絵画のように赤い。<br />
　目の奥が痛くなるような強い郷愁に襲われながら近くの机に座り込むと、<br />
　ひんやりとした木材質の感触が薄いスカートから染み込んできた。</font></p>
<p><font size="4">　ここは、学校、だ。</font></p>
<p><font size="4">　窓ガラスに映るボクの姿は、確かに良く知るカタチをしていた。<br />
　薄く埃の張ったそれに指を立てながら数秒待つと、教室奥の引き戸ががらりと鳴った。<br />
　「アイちゃん」<br />
　おかっぱ頭の内気そうな子が声を掛けてくる。<br />
　「一緒に帰ろう」<br />
　現実感は、具体的な説明を求めている。<br />
　ボクは良く知るはずの彼女を見つめて、ただ何かのアクションを待つしかない。<br />
　「お店閉まっちゃうよ？」<br />
　困ったような笑顔、それと符合する名前が１つだけ有った。<br />
　「夏実ちゃん」<br />
　「なっちゃんです」<br />
　「あ、そう」<br />
　やんわりとした訂正を受けながらボクは支度を整えて教室を出る。<br />
　「行こ」<br />
　手を繋ぐ。<br />
　「うん」<br />
　為されるがままそれを握り返す。<br />
　懐かしい感触がした。<br />
　彼女は、部活帰りなのだろう。制汗スプレーの香料に混じって、微かに甘い体臭がした。</font></p>
<p><font size="4">　旧新宿区のバラックには、怪しいモノを扱う店が幾つもあった。<br />
　ボク達の目的は、その冷やかしと言ってほぼ間違いない。<br />
　それでも１つ何か買おうと思って目を凝らしていると、<br />
　なっちゃんは薄く笑ってそれに付き合ってくれた。<br />
　――大衆雑誌の複製。<br />
　――インチキな古文書。<br />
　――バネ仕掛けのダイカスト人形。<br />
　――使用済みの体操着。<br />
　――懐かしいポップスの譜面。<br />
　――おもちゃの兵隊。<br />
　――耳が黒く焦げた子犬。<br />
　――鳩の串焼き。<br />
　――腐ったトマトソースの缶詰。<br />
　――ヴィデオレコーダー。<br />
　――重曹水の詰め合わせ。<br />
　――ケミカルな色彩に塗られただけの廃材。<br />
　おおよそ想像の範囲を超えない見慣れたガラクタが、次から次へと視界に入ってくる。<br />
　「コレは？」<br />
　なっちゃんが、ボクに半透明のケースを差しだした。<br />
　プラスティック製の、赤い眼鏡。<br />
　「ボク、目は悪くないよ」<br />
　「良いから」<br />
　ひんやりとした感触と共に、こめかみを通る眼鏡の蔓。</font></p>
<p><font size="4">　――なんだろう。ひどく、違和感がある。</font></p>
<p><font size="4">　くださいな、と言って、なっちゃんはサングラスの親父に５００円札を渡していた。<br />
　その横顔をじっと見ていると、彼女はひっこりと笑って、「似合ってるよ」</font></p>
<p><font size="4">　公園のベンチに座りながら、互いに肩と頭を寄せて眼を閉じている。<br />
　上下に重ねた手を、指まで丁寧に絡み付けながら、<br />
　ボク達はただ時間を惜しむように太陽を見ていた。<br />
　「元気だった？」<br />
　場違いな言葉が発せられる。その意味に薄々気付きながらも、うんと返事をした。<br />
　前髪を撫でる風が、やけに優しい。<br />
　「どれぐらいぶりかな、こんなの」<br />
　答えられない。彼女の独白に任せて微睡んだ振りをする。<br />
　「介入&hellip;&hellip;ううん、登場できるなんて思わなかった。<br />
　アイちゃんの偶然にそこまで期待できなかったからね。<br />
　私がそれほどの重要度を持っているなんて思わなかったし。<br />
　逆を返せば、それくらいあなたは追い詰められちゃってるっていう証明でも有るんだけど」<br />
　重ねた左手に、ぎゅっと言う感触があった。<br />
　「私が持っている意味はほんの少しだよ、アイちゃん。<br />
　 なっちゃんこと柊ナツミは、あなたとデートしている最中、話にならない唐突さで殺される。<br />
　 それだけのピース。それだけのエキストラ。<br />
　 何の才能も演目もない私は、あなたの憎悪を引き出す爆薬の一部に過ぎない。<br />
　 悲しいけれど、それが全て」<br />
　陽が、絞られていく。<br />
　真円を描いたまま赤く引き絞られていく太陽は、数瞬のウチに小さな月へと反転する。<br />
　その境界はひどく曖昧で、涙が塞ぐ視界のようにぼやけている。<br />
　「アイちゃん、生きて。でも忘れないで。<br />
　 私の無念じゃなくて、あなたの取り戻したい時間を」</font></p>
<p><font size="4">　紅い月が生まれる。</font></p>
<p><font size="4">　なっちゃんの身体は、数秒と持たずに解体された。<br />
　無力なボクはそいつを見据える。<br />
　赤黒いカタマリとしか視認できないそれを睨み付ける。<br />
　ただ見るだけでも、記憶さえ持ち帰れれば、そいつは生きた武器になる。<br />
　視界は夾雑物を透過し始め、蜘蛛の巣のようにのたくったワイヤの群れへと変わった。<br />
　感情が、異物の否定に特化していく。<br />
　――恐怖すればするほど、記憶と血液の味は上がるという。<br />
　ボクは、突き立てられる牙の感触を頭から追い出し、ただ中天に浮かぶ無力を見据えた。<br />
　ぞぶり、ぞぶりと首筋が蹂躙される。激痛は、その後に。<br />
　熱病のような快楽はさらにその後。<br />
　少しでも甘味を引き出そうとして、そいつは私の身体を執拗にねぶっている。<br />
　肩口に爪を立てながら、ボクはただ忘却という陶酔だけに抗い続け――</font></p>
<p><font size="4">　「大したもんだな、その執念も」</font></p>
<p><font size="4">　――声が、聞こえた。<br />
　猛烈な勢いの蹴りが入って、ボクは吸血鬼もろとも吹っ飛ばされる。<br />
　燃えるように鮮やかな髪をした女の子が、不敵な笑みを浮かべて手を振り下ろした。<br />
　黒い鳥が一斉にソレを捕食し、ただの闇へと還っていく。</font></p>
<p><font size="4">　「だが、忘れるんだ。そんな激痛覚えていたところで、オマエには何の益もない」</font></p>
<p><font size="4">　不思議な感情が込み上げて来た。<br />
　懐かしいような、嬉しいような、焼け付くような、ひりつくような、御しがたい情動のカタマリ。<br />
　「&hellip;&hellip;おっかねぇ目しやがって。<br />
　 言っとくが、今オマエが能力を全覚醒させたとしても、オレには敵わないぜ」<br />
　「どうして？」<br />
　「オレはこの街の『最強』だからだよ」<br />
　&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;くつくつ、と。笑いが込み上げてくる。<br />
　「笑わせるな、吸血鬼」<br />
　放った一言に、紅玉の魔王はぴくりと眉を引きつらせた。<br />
　「あんだって？」<br />
　「ボクの記憶を消して、その記憶をお前が持っているというのなら、<br />
　 その記憶をお前が奪ったって事じゃないか。<br />
　 この街の人間はね、情報という物に関して過剰なまでに敏感なんだ。<br />
　 特に記憶という影法師に対するソレは執着の域を超えている。<br />
　 記憶喪失の人間なんていう空っぽな存在は、彼らにとっては幽霊に等しく無価値なんだよ」<br />
　口をついて出た言葉には脈絡も何もなく、ただ感情を媒介とする音として強く残った。<br />
　「こいつは――――ほほぉ。なかなか脈が有ってくれるじゃねぇか。<br />
　 たまには昼寝なんて言う酔狂もやってみるもんだ」<br />
　愉快そうに笑う紅。<br />
　ただ引きつけを起こすように嗤う自分。<br />
　不協和音が狭苦しい空間を支配し、冗談のような衝突を繰り返す。<br />
　「&hellip;&hellip;でも、惜しいな」<br />
　「何が」<br />
　「時間切れだよ、ホラ」<br />
　親指で差された方向を見上げると、大きく口を開けた満月が赤味を喪い、<br />
　同時に地面が崩れ去る。<br />
　その中を、紅は器用に渡っていき、ボクはただ巻き込まれるように落下した。</font></p>
<p><font size="4">　――起きた瞬間、目があったのはテキストを持った社会科教師だった。<br />
　「宍道」<br />
　「うぁい」<br />
　「バケツとほうき、どっちが好みだ？」<br />
　「寝てました。ごめんなさい」<br />
　「じゃあ箒を持って廊下に立ってろ」<br />
　「マジすか」</font></p>]]>
    </description>
    <category>E.G.O　朱</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/e.g.o%E3%80%80%E6%9C%B1/%EF%BD%81%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%90%EF%BC%91%EF%BC%90%EF%BC%91</link>
    <pubDate>Tue, 05 Sep 2006 23:58:36 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>ライトグリーン</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><font size="4">　私は振り返った。</font></p>
<p><font size="4">　絵に描いたようなラストシーンは訪れなかったけれど、<br />
　振り返った景色はそれなりに感傷的なモノではあった。</font></p>
<p><font size="4">　住み慣れた部屋。</font></p>
<p><font size="4">　グリーンハイツ２０１号室を出た私は、ボストンバッグ１つでここから旅立っていく。</font></p>
<p><font size="4">　夕暮れに佇む２階建ての、狭いけれどそれなりに手入れが行き届いた<br />
　このアパートで過ごした時を、ダイジェストで頭の中に描き出す。</font></p>
<p><font size="4">　話にならない程に平均的な日常と、</font></p>
<p><font size="4">　結構忘れがたい触れ合いの記憶と、</font></p>
<p><font size="4">　後はまぁ悲喜交々。</font></p>
<p><font size="4">　「行ってきます」</font></p>
<p><font size="4">　そう言って。</font></p>
<p><font size="4">　私は踵を返した。</font></p>
<p><font size="4">　最後だけど、きっとサヨナラじゃないから。</font></p>]]>
    </description>
    <category>ベリーショート</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/%E3%83%99%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3</link>
    <pubDate>Sun, 20 Aug 2006 08:17:30 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>outof1059</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><font size="4">　継内弓子は、いけすかない女だった。</font></p>
<p><font size="4">　強気で生意気で口うるさく、真面目で堅いイメージしかなかった。<br />
　それが弱い自分を守るための鎧である事に気付けるほど大人ではなかったし、<br />
　知っていたからと言って、今まで持っていた苦手意識がなくなった訳でもなかっただろう。</font></p>
<p>　しかし、単純な話だと解っちゃいるが&hellip;&hellip;、<br />
　強気な女の弱さと言うのは、どうも魅力的に見えるモノらしい。</p>
<p>　少なくとも、一方的に嫌ってて悪かったかな、という気にさせられてしまうくらいには。</p>
<p>　</p>
<p>　きゅ、というシャワーの元栓が閉まる音が聞こえ、しばらく沈黙。</p>
<p>　「聞いてんじゃないわよ」</p>
<p>　エコーのかかった毒を吐いた後に、再び栓を捻る音。<br />
　多分、着替えを「聞かれたく」ないんだろう。律儀なことだ。</p>
<p>　――そうして複雑なノイズを聞き流しながら数分。</p>
<p>　シャワー室から出てきた継内の顔色は、やはり良好とは言えなかった。</p>
<p>　「落ち着いたか？」</p>
<p>　言うと、ジャージ姿で洗い髪という未知の姿のそいつは、冷たい目つきだけは変わらずに、</p>
<p>　「タオルが匂ったわ」</p>
<p>　と返してきた。</p>
<p>　「仕方ないだろ、使用後なんだから」</p>
<p>　「捨てて」</p>
<p>　「勿体ないこと言うなよ」</p>
<p>　「良いから、それは捨てて。お願いだから」</p>
<p>　&hellip;&hellip;お願いされちゃ仕方ない。こいつは焼却炉にぶち込んでおくとしよう。</p>
<p>　月明かりが差す、蒼い部室棟の中で、俺と継内は互いに壁を背にして話し始めた。</p>
<p>　「同情なんて要らないわよ」</p>
<p>　「してねえよ。アイツらの肩持つ訳じゃないが、こうなる原因もお前にはあるんだ。<br />
　心の隅っこで反省しろ」</p>
<p>　「ひっどい男。こうなった女に言う台詞かしら」</p>
<p>　「同情を拒んだ人間は、大抵こういった憎まれ口を叩かれることになる。知らなかったら覚えとけ」</p>
<p>　「アンタに言われるようなら、私もおしまいかもね。解ってるわよそれくらい。ええ、解っていますとも」</p>
<p>　台詞とは裏腹に、自分の腕を寒そうに抱き締める継内。<br />
　いつものような冷然とした覇気はない。<br />
　代わりに、自虐めいた影が沈み込んでいる。</p>
<p>　「お前、制服は？」</p>
<p>　「バカなこと聞かないで。アレこそ真っ先に捨てたわよ」</p>
<p>　「じゃあ、明日からどうすんだ？」</p>
<p>　「代わりのが一着有るわ。でも、しばらくジャージの方が良いかもね。それっぽくて」</p>
<p>　フン、と鼻を鳴らして強がる継内。</p>
<p>　</p>
<p>　――俺は、ほんの少し前の時間を、ほんの少しだけ思い出してみた。</p>
<p>　　アレは手遅れなのかそうでないか微妙な状況だったが、本人が未遂だと言い張ったので、<br />
　致命的な所までは大丈夫だったんだろう。</p>
<p>　人前と言うことで繕っては居るが、&hellip;&hellip;やはりショックだったと言うのは変わらない。</p>
<p>　そう思えた。</p>
<p>　</p>
<p>　「仮定の話、なんだけど」</p>
<p>　細い声で、うつむきがちな言葉は、こう続いた。</p>
<p>　「アンタがお気に入りの服を着て出掛けた時、野犬に襲われたとして――</p>
<p>　傷が完治した後も、その服を着ると思う？」</p>
<p>　月が出たのか、雲が晴れたのか。<br />
　対面の継内の姿が、にわかに柔らかく照らし出される。</p>
<p>　水色のジャージ。</p>
<p>　赤のストライプ。</p>
<p>　三角の縁メガネ。</p>
<p>　細い肩。</p>
<p>　細い首。</p>
<p>　貫く眼。</p>
<p>　「何の話だ」</p>
<p>　「制服着るの、嫌になりそう&hellip;&hellip;って、そう言う話よ」</p>
<p>　「気に入ってたのか」</p>
<p>　「それなりにね」</p>
<p>　「だからって、いっつもジャージって訳にはいかないだろ」</p>
<p>　「そうね。そんなの変。&hellip;&hellip;うん」</p>
<p>　「しっかりしろよ、委員長。そのデコと眼鏡は飾りか？」</p>
<p>　「デコと眼鏡で人生やってないわよ、全く」</p>
<p>　小突く動作をしながら、ようやく継内が微笑みを漏らした。</p>
<p>　「馬鹿は良いわね、楽そうで」</p>
<p>　「なんだとこの」</p>
<p>　「アンタのは、良い馬鹿よ。馬鹿にも種類があるじゃない。</p>
<p>　「人の気持ちが分からない馬鹿と、解ってても何もしない馬鹿と、<br />
　分かる分からないに関係なく自分の事しかできない馬鹿と」</p>
<p>　「あと、馬鹿と連呼する馬鹿だな」</p>
<p>　「&hellip;&hellip;確かに、それもあるわね」</p>
<p>　「やーい馬鹿」</p>
<p>　「ケンカ売ってんの？」</p>
<p>　「今ぐらいしかお前を馬鹿と言えそうにないからな」</p>
<p>　「&hellip;&hellip;ひっどい男」</p>
<p>　</p>
<p>　それからしばらくの間、俺達は散発的に馬鹿と罵り合い、<br />
　継内がやけに可愛いくしゃみをしたところでお開きとなった。</p>
<p>　送ろうかと言ったらタクシーを呼ぶから良いと断られた。</p>
<p>　</p>
<p>　――外は、よく晴れていた。</p>
<p>　５分で来るらしい迎えを待つ為に、２人並んで校門までの道を歩いた。</p>
<p>　「今日のことは、忘れて」</p>
<p>　「そいつは、お願いか？」</p>
<p>　「そうよ。変な意味じゃなく、ね」</p>
<p>　「お前がそう言うんなら、この件は誰にも言わないし、何もしない。<br />
　――だけど、忘れてって言うのは無理だな」</p>
<p>　横顔が、俺を見上げる気配がした。</p>
<p>　構わず続ける。</p>
<p>　「嫌なモノも、見ちゃいけないものも見たけど、俺はお前の強さだって見た。</p>
<p>　案外普通に喋れる奴なんだって思った。</p>
<p>　髪降ろした所を初めて見たし、変なくしゃみするんだというのも知った。</p>
<p>　そういう新鮮な気持ちまでひっくるめて、忘れたくない」</p>
<p>　砂利を踏みしめる音だけが続く。</p>
<p>　「同情で言ったんなら殴るわよ？」</p>
<p>　「素直な感想だ。同情とかは、ない」</p>
<p>　「馬鹿」</p>
<p>　「馬鹿は公認の事実だ」</p>
<p>　「こんな時にそんな事を平気で言うのは、違う馬鹿ね」</p>
<p>　「新感覚な馬鹿か」</p>
<p>　「空気の読めない馬鹿よ」</p>
<p>　何をー、と思って振り向くと。</p>
<p>　継内は素早く俺の手を取って、逆の手で押さえ込むように奥襟を掴み――、</p>
<p>　何かの連続技で有るかのように口づけた。</p>
<p>　夜の校舎には音が無く、風もなく、</p>
<p>　本当に５分でやって来たらしいタクシーが来るまで、俺はどうすることもできないまま硬直し、</p>
<p>　「おやすみなさい、また明日」</p>
<p>　そう言って手を振る継内が見えなくなっても、動けずに居た。</p>
<p>　――それじゃあショックで忘れなさい、</p>
<p>　という呪文めいた囁きが、後になって生々しく甦った。</p>
<p>　あと１０年は忘れそうにないと思った。</p>
<p>　ようやく息を始めたところで、これが初めてのキスだと言うことを思い出した。</p>
<p>　赤面と同時に絶叫した。</p>]]>
    </description>
    <category>単発ショート</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/%E5%8D%98%E7%99%BA%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88/outof1059</link>
    <pubDate>Sun, 20 Aug 2006 08:01:20 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">0385z.blog.shinobi.jp://entry/40</guid>
  </item>
    <item>
    <title>タマシイグランバザール</title>
    <description>
    <![CDATA[<p><font size="4">　「探しに行かなくちゃ」</font></p>
<p><font size="4">　彼女はそう呟いて出かけていった。<br />
　いつものことなので放っておく。</font></p>
<p><font size="4">　一週間前、いきなりドアベルを乱打した挙げ句「私を拾って下さい」とのたまった彼女は、<br />
　何か良くない病を抱えている。</font></p>
<p><font size="4">　それを拾った上にちゃっかり頂いてしまっている僕も僕だと思うが。<br />
</font><font size="4">　妙な小説ばかりを読んで浮き世から離れた生活を送っていた所為か、<br />
　現実離れしているこんな現象をも、怠惰な脳は受け入れてくれた。<br />
　単に検閲機関が作用していないだけかも知れないが。</font></p>
<p><font size="4">　ともかく、おはようの挨拶と共にあっさり手首を切る素敵なルームメイト様は、<br />
　今日も食後のお散歩に出かけた。<br />
　特に心配することはない。<br />
　返ってきた後はバネ仕掛けの人形の如く激しいテンションで作り話を聞かされるから、<br />
　心の準備だけはしなくてはならないが。</font></p>
<p><font size="4">　――どん、どん、ど、かこん。</font></p>
<p><font size="4">　特殊なノックは彼女のモノだ。</font></p>
<p><font size="4">　「開いてるよ」</font></p>
<p><font size="4">　言うと、一呼吸置いて音もなくノブが回る。<br />
　以前同居した男は、そうしないとご自慢のフックを見舞ったらしい。<br />
　無駄に美しいスキルだ、と思う。</font></p>
<p><font size="4">　今日は膝から下が泥まみれ。<br />
　ドブでも漁ってきたんだろうか、酷い匂いが狭い室内を満たす。</font></p>
<p><font size="4">　「&hellip;&hellip;どうしたの？」</font></p>
<p><font size="4">　彼女は後ろ手に何かを隠し持ちながら、焦点の合わない目で僕を見ていた。<br />
　５秒。<br />
　喋る気配がないので何か言おうかと思ったら、「見付けた」と言った。<br />
　出かける前の記憶を掘り起こす――ああ。</font></p>
<p><font size="4">　「何を？」</font></p>
<p><font size="4">　極力優しく微笑んで、僕は何が出てきても良いように心の準備を始めていた。<br />
　そして、</font></p>
<p><font size="4">　「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;あ、」</font></p>
<p><font size="4">　取りだしたのは、ハート型の容器&hellip;&hellip;にタップリと盛られた汚泥だった。<br />
　彼女は点滅するかのように泣き顔と笑顔を繰り返し、</font></p>
<p><font size="4">　「アナタの心です」</font></p>
<p><font size="4">　と言った。</font></p>
<p><font size="4">　じゅくじゅくとうごめく泥の中には、名も知らぬような雑種の虫が蠢いていた。</font></p>
<p><font size="4">　僕は頭部を後ろに傾け、ひとしきり笑ってから心中で呟いた。こりゃあ――ケッサクだ、と。</font></p>]]>
    </description>
    <category>単発ショート</category>
    <link>http://0385z.blog.shinobi.jp/%E5%8D%98%E7%99%BA%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88/%E3%82%BF%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%82%A4%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%AB</link>
    <pubDate>Sun, 20 Aug 2006 07:51:00 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">0385z.blog.shinobi.jp://entry/39</guid>
  </item>

    </channel>
</rss>