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 「今はさ、何も言わないで、こうしててよ」

 呟いた声の中に、震えは混じらなかったと思う。

 私としては及第点だ。

 「わがままかも知れない。気まぐれだって言われても良い。

 でも、このキモチだけは本当だから」

 親友の背中は、暖かかった。

 親友でさえなければと、そう思った。

 ――でも。

 こういう思いをするのだけは、避けられなかったかも知れない。

 学生服の生地に顔を埋めていると、雑多な生活臭とクリーニング屋の匂いがした。

 思わず、走馬燈が回りだしそうになる。

 いけない。

 5秒後には、私は笑顔で離れなければいけないのだから。

 感傷なんて振り切らなければならない。

 ――さあ、顔を上げて。

 1秒につき1年の想いと別れてしまおう。

 ――バイバイ、

 ――さよなら、

 ……また会う日まで。

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