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 「記号的すぎるってのも、哀しい事よ?」

 そう言うと、泣きそうな目で彼女は笑った。

 前後の文脈は憶えていない。

 ここに来てからの会話は、全て沈黙を埋めるためだけに使われたのだから。

 言葉は、距離感の喪失を緩慢にする。

 これも彼女の言葉。

 曰く、散文的。

 曰く、逃げ口上。

 曰く、ポエムと思しき戯れ言。

 ――理系の女は言い訳を好むと言う。

 だが、彼女の言い訳を聞くのは嫌いじゃなかった。

 好んで煙に巻かれていった。

 今思えば、そうすることで互いに不都合なことを忘れていったんだと思う。

 「……ごめんなさい」

 真実、絞りきるように。

 たった1つの吐息で僕たちは終わった。

 ロジックじゃないモノを1つ棄てた彼女は、いつもより一回り小さく見える。

 僕は空を見上げて、ゆっくり大きく息を吐いた。

 抱き締めることは、許してくれない。

 鉛色の空からは、ドラマの絵になる雪の代わりに、遠雷だけが響いていた。

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