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一月下旬の寒い夜、私達は通い慣れたファミレスで、ささやかなパーティを開く。 角っこの席で歌われる黄色い声のハッピーバースデーに目をやる人は、まばらだ。 店員さんもお馴染みのこの行事で、私達は遅い年明けを実感する。 「あゆー、おめでとー」 「ありがとー」 ぶふ――――っと吹き消したロウソクの火が、年々増えていくのが何とも哀しい。 ハイテンションなだけの拍手と、何度も繰り返すありがとうの中で、 簡単なプレゼントを貰い、ジョッキを煽り、手軽な悪口を叩き合った後で、誰かが言う。 「これであゆも29か――」 しん、とする空気。 「……信じらんないよね、まだ中学生みたいなのに」 中学生言うな。背は150あるんだぞ、これでも。 「あたしたち、そろそろ親子とかに見られるんじゃない?」 「かもね……中身は一番おっさんなのに」 おっさん言うな。競馬も競艇もやってないんだぞ。 「そろそろ旦那が欲しい時期よねー」 全員、溜め息。 地方在住の仲良し組が、みんな揃って行き遅れ。 そんな連帯感を深めるための定例行事が、今日という日のバースデーが持つ意味である。 「なんだおめーら、呑みが足りないんだよう!!」 自慢のハイトーンヴォイスで繰りだしたアオリに、皆が目を丸くしながら、 気持ち、ここだけドイツのビアホールになったような錯覚が、私達を襲う。 ソーセージとビールとシャンパンだけで構成されていくオーダー。 ブラックリスト寸前である私達対策に、今日の酒類が尽きることはない。 「あたしのどこがいけないって言うのよ――ッ!!」 「おれのカレーが食えねぇってのか――ッ!!」 「滅びろヒューマ――ンっ!!」 怒号と悲鳴と皿が飛び交う中、私達はこうして新年を祝う。 目を逸らしていても避けられないものだから、手荒く、厚く、歓迎する。 ……完全に意識を失う前。 親友が、堪らず声を掛けてきたウエイターに、 「うるせえ、てめーらそれでもロイヤルホストか――ッ!!」 と言った場面を記憶した。 ああ、このパーティは今年でおしまいになるな、と確信した。 PR |
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