echo――未来完了 ≫2006.08.19 [Sat]

　「いぇーい！　私、元気ですかー。私でーす！」

　プロジェクターに、脳天気な顔と声が写し出される。

　少しだけ、音量を上げた。

　バカ、何年後とか言わなきゃ駄目だろ――、

　「ありゃ、そうだっけ。とにかく未来の私は元気ですか？　お体変わりないですかー？」

　日付は、７年前の今日。

　時刻は、今とほとんど差はない。

　「えと、彼は優しくしてくれてますか？　今も変わらず傍にいますか？　
　私と、その、生きてコレを見られてますか――？」

　早送り。

　ベソをかき出したそいつを、何処かの誰かがなだめている。

　――再生。

　「……なさい。えっと、今日は一生の中でも最高にビッグなお知らせが有ります。
　何だと思いますかー？」

　泣き腫らした顔で、泣き笑いで、それでも誇らしげに彼女は言った。

　「じゃーん！　見て下さい、この婚姻届！　遂に年貢の収め時という奴ですね！　
　これでもう浮気なんか――って、何で泣くの？　私がガマンしてるのにずるいよ！
　ねぇ――」

　ぷつ。

　その後のやりとりが耐え切れず――、

　俺はモニタのスウィッチを切って、真っ暗なリビングを後にした。

　
　

　「あー、今一番良いところだったのにー」

　と、脳天気な声は不満を漏らした