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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 私は傍観者だ。息を殺して世界を見つめる。 ひたすら地味な女子高生、そのロールプレイの一巻として存在していたペーパーデバイス。 いつものように自主休校を決め込み、趣味の人間観察をしていると、 驚いて胸ポケットのケイタイを確かめると、 はて、コレは何だろうかと首を傾げたとき、視界の隅で何かが動く気配を感じた。 信じられるだろうか。 見た事もない、だが確実に何かのフォントで有ることは間違いないカタチで、 私が描写するニンゲン達の悪臭。 その興奮に酔っていると、また1つ違った描写が付け加えられた。 ……設定だ。私はぼんやりと直感した。 「『碧の花瓶』の――」 がたん。 「イケナイんだ」 くすり、くすりと私は笑った。 干渉したのはそれっきり。 スポーツバックの中にある本の空白は、私が目を通せば即座に情報を吸い上げてくれる、 貯金を下ろして、ありったけの「空白のハードカヴァー」を買おう――。 有り得ない思考だ、普通なら。でも、私は止まらなかった。 発注を受けてくれた印刷所、その窓口で。 「アンタ、憑かれてるね」 ――無言でポケットにある中也を取り出す。 『貴宮士音 19 春日狂騒 鋼の筆 劫火 検閲者』 ……へえ。 「差し上げます」 私は言って、その本を彼女へと渡した。 それから先はビジネスライクに取り持ってくれた。 西日の射す、無人の環状線、その第1車輛。 「――ムラサメ、キッカ」 ――名を、 「15。鏡面世界。鉄芯。月光。簒奪者。……ん?」 呼ばれた――!? 「参ったな、その制服……君、妹の同級生じゃないか」 私は急いで詩集をめくり視線を走らせる。 『四宮裕貴 18 硝化限界 王の左手 m____ 』 ……違和感。 視線の先でカーソルがテンメツしている。 「なん……で」 私の世界記述は、自分でも制御できない、完全に自動的な現象だった。 「――何で?!」 何故。どうして。 「ああ、そう言うことか」 彼は、私の知らない何かを納得して、溜め息を吐いた。 「どこに魔が差したのかと思えば――、オマエ、ずっと眼鏡を変えていないだろう」 ……とん、と鼻先のフレームに指が伸びる。 「『色』が付いてしまってるぜ――」 ぱあぁぁぁあん、と。 やけに長い破裂音がした。 薄ぼんやりとした、しかし、余りに風通しの良い視界で、彼は悪魔のような指先を私に向けた。 ころされる。 きっと、 「なぁ」 ……掛けられた言葉は、気安かった。 「こんな状況の後で悪いんだけど、1つ頼まれてくれないか」 拒否権なんて有るはずもない。 顔色までは解らない。 「……妹の友達になって欲しいんだけど」 PR |
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