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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 「キィちゃん、おっはよーーう!」 親友、四宮サクラは元気に登校してきた。 「おはようございます」 ぺこりと頭を下げると、 「うん、おはよー」 と再び挨拶が帰ってきた。隣にいる彼が、困ったような顔で会釈をする。 「今日は一緒なんですね」 「妹がかわいくてしょーがないお兄ちゃんは『初登校も心配でー』、 「……台詞を創作すんな」 めし、と彼女の分け目にチョップが入る。くあ、と言う悲鳴。 「本か?」 と聞かれ、ギクリとする。 「キィちゃん、活字中毒なヒトだもんねー」 面白そうに彼女は笑い、ちょっと複雑そうに彼も笑った。 「無いと、落ち着かなくて」 ぱらり、と手帳をめくる。罫線を沿う活字に、期待してるような感触はない。 「ごめんなさい」 「謝る事じゃないさ」 咎めるような口調ではない。
真実、彼は私を救ってくれたのだと思う。 「まさか、シトをもう1人増やすわけには行かないからな」 ――確か、そんなことを呟いていた。 印象的だったのは、むしろその後。 読むモノを物色していると、枕元に場違いな電話帳が有るのを発見し、 「落ち着かない、か?」 わしわしと濡れた髪を拭きながら、彼が複雑そうな顔で私を見ていた。 「癖なんです、何かを流し読みするのって」 タオル越しの手が、ピタリと止まった。 「良いさ。吸血衝動っていうのは、大抵そう言う無自覚な消費で始まるモンだ」 ええと。 この言葉を発するのに、どれだけの時間と労力を費やしただろう。 「じゃあ聞くが」 心底、疲れたように 「君はあのインクが何だと思っていたんだ?」 ……問いかけられる。 心底――もう何度こんな気持ちになるのか解らないが――、震えと吐き気を感じた。 それから私は、あの悪夢のような期間に何が起きていたのかを、 無人になった環状線。 「君の場合、身体の劣化はそれほど進んでいなかった。そこに関しては運が良かったと言える」 あの後、あの時。 「シズネさんから聞いたときは、耳を疑ったがね。昼日中に出歩く、……夜族が居たってさ」
私は秋色の空を見上げた。もう、太陽に敗退して倒れるようなことはない。 「あれ、キィちゃんメガネ変えた?」 ……ちょっと言い辛いことを聞かれて、口ごもった。 「ああ、俺が買ってやったんだ」 彼が口裏を合わせてくれる。 「これから、色々と迷惑かけるだろうからな」 「むー、何かその色々って所に存外なニュアンスが、」 ぴたりと止まって、こちらを見やる。 「――お兄ちゃんプレゼンツメガネ?」 微妙な英語イントネーションで、きゅいぃぃい、と首を傾げるサクラ。怖い。 「何ですか、その微妙にラブを感じさせるシチュエーションは?!」 「あ、や、その」 「別におかしい事じゃないだろ。 「初めて聞いたよそんなこと! ていうかアレ? めごし、と。 割合強烈なチョップを分け目に食らい、サクラは呻き声を上げて沈黙した。 初登校の通学路は、こうして、いつの間にか終わった。 PR |
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