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 「ねぇお兄ちゃん。大人にしてって言ったら――してくれる?」

 妹はそう言って、上目遣いに俺を見た。

 冗談には見えない。

 本当の意味まで解った上での、誘惑。

 「仮に俺がお前を好きだったとして」

 振り向いて答えた。

 「そう言う動機なら、間違いなくしてやらん」

 「……そっか」

 答えなど……最初から解っていたし、どうでも良かった。そう見える。

 思い詰めていたのは知っていた。

 だからこそ、俺は正面から答える。

 「じゃあキスして」

 「おい」

 「お願いだから」

 涙が落ちる。

 「もうしないから」

 妹は、ただ一つの許しだけを待っている。

 その様が、ひどく切ない。

 顔を近づけると、懐かしいような、くすぐったいような匂いがした。

 ――唇から、体温が繋がる。

 「えへへ」

 妹は思い出したように、笑った。

 「何で笑う」

 笑顔のまま、

 もう一つ涙が落ちて、

 「お夕飯の味――したから」

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