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 「感傷的じゃないですよ。感動的って言うんです、こーいう時は」

 ……そうやって街の景色を評しながら、彼女はスナック菓子を旨そうに頬張っていた。

 お世辞にも、感動しているようには見えない。

 恐らく、彼女の人生においての「感動」とは、
 爪を噛む距離にある1つの楽しみに過ぎないんだろう。

 「……そうだな」

 遅れた返事に気を良くしたのか、彼女は少年のような笑みを見せて、
 
菓子の袋をこちらに向けた。

 ケミカル味のコーンパフ。

 それに手を伸ばしつつ、朱色に染まっていく麓の景色を見やった。

 「――綺麗だな」

 「はい」

 もさもさと銀色の袋を漁る音が、何か間抜けだ。

 横顔をちらりと見る。

 数秒遅れて目が合うと、にへーという無邪気な笑みが返ってきた。

 「なぁ」

 聞いてみる。

 「何で俺を誘ったんだ?」

 目をぱちくりとさせ、直後、

 「わたし、センパイのことそんけーしてますから」

 含むところがありそうな表情でそう答えた。

 「……付き合っても良いくらいに」

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