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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 最汚染区域の空は、昼間だというのになお暗かった。 びしゃり。 ……日当たりの悪さにばかり気を取られた所為か、水たまりに足を取られてしまう。 「……厭な、匂い」 思わず本音が吐いて出た。 ……だが、世の中広いもので。 今日わざわざこんな所に出向いたのは、 憂鬱になる。私は湿った空気に、そっと溜め息を吐いた。 ――古文書級に読みづらい手書きの地図を、ぐしゃりと握りつぶしながら。
「お、いらっしゃい」 地元縮尺という言葉に殺意を覚え始めた頃、物理的に傾いて倒壊寸前の印刷所の前で、 木桶に柄杓。 文明レベルが後退した昨今、にわかに流行った和のスタイルだが、 「はるばる、こんな所にようこそ。ん、冷えるようなら火鉢でも出そうか?」 笑顔が引きつっていくのが解る。 「いえ、お構いなく。すぐに済む用事ですから」 「そうか。なら良いが」 懐から何かを取りだして、マッチを擦る。煙管だ。 「まあ上がってくれ。湿気ってるが……茶でも入れよう」 玄関脇にに積み上げられた石灰の袋は、ざっと見て、およそ30。 例の件が引き起こした局地的な天候異常。 「どうした。ウチの間取りがそんなに珍しいか?」 もう見なくなった魚へんの茶碗を盆に載せて、彼女……貴宮シズネは腰を下ろした。 「いえ、ここで生きるのって大変なんだろうなって思ってました」 「まぁ最近は住み難いがね。それでも我が家を離れるってのは、色々と難しいもんさ」 紫煙を吐きながら、微笑してこちらを見る、彼女。 「やっぱり用件は避難勧告かい?」 「違います。まずは、お礼を」 予想外の反応だったんだろう、軽く驚いてちゃぶ台に肘をつく。 「先日の件は、貴方の協力が有ったからこそ解決したようなモノです。 「……ああ、それなら受け取れない。 やんわりと、封筒を突き返された。ここまでは、挨拶。本題はここからだ。
「甲斐口空が……昨夜、息を引き取りました」
碗を持つ手が、震える。 一気に、湿った空気が重みを持ち始めた。 滞留する沈黙。 「そう、か」 それを無理矢理飲み込む、彼女。 「……これで、みんな逝っちまったか。長塚も、ミコトも、由比菱中条の嬢ちゃんも、 戦士の名前を惜しむように並べ、沈痛に溜め息を吐く。 「私が知ってるのは、アイツらだけ。教会の中では、もうアンタ1人だな」 「……彼は、最期まで立派な戦士でした。 煙管の灰を安物の磁器に落としながら、彼女は俯き加減に話し出す。 「教師補からいきなり代表に抜擢、か。それだけ、今が苦しいって事でもあるんだろうな。 「そうですね。先の件のように、今は賞金を賭けてハンターや情報屋と連携し、 ぎり、と。 そう、私は原姿教会という組織を牽引して行くには、余りにも若く、弱い。 でも、私は。 PR |
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