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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 この街の夜明けに、鳥の鳴き声はない。そもそも、鳥自体が存在しないからだ。 ……だらだらと、どうでも良い連想が続いていくのをやんわりと静止しながら、思う。 「……ぐう」 可愛げも何もない声を漏らして、妹はにゃむにゃむと呟きながらシーツを被る。 「……もう食べられないよう」 それは朝という空間の中で、自分が努めなければならない仕事を思い出させる内容だった。
「ぅはよー」 眠い目をごしごしとこすりながら、サクラはふらふらと洗面所に消えていった。 ほとんど夜明けまで及んだ「学校のすごかった話」は、もう半分以上記憶にない。 裏マーケットの親父は新鮮な卵パックを素敵な値段で売ってくれるが、 一度、塩ジャケ中心メニューを出したことが有ったが、その時はマンガのように泣いた。 ちなみに、この事をシズネさんに相談したら、満面の笑みを浮かべて「馬鹿者」と言ってくれた。
「たまごやきさん、たまごやきさん、おいしくなーれ~♪」 ぼたぼたとウスターソースをかけながら、即興のメロディを口ずさむサクラ。 主養分はパンとコーヒー。甘味の類は付けない。 「ねえ、お兄ちゃん」 「何だ。キャベツのおかわりならもう無いぞ」 「違くて、何でいつも立って食べてるの? お行儀悪いよー」 ……妹にお行儀悪いと言われた事にショックを受けつつ、何とか適当にごまかした。 「作ってる最中に食うっていう生活が長く続いたからな。癖みたいなもんだよ」 ふーん、と眉間にしわを寄せて食事に戻るサクラ。まぁそれで良い。
「さてお兄ちゃん。今日は休日ですね、そうですね?」 食事が終わり、さて一服でもしようかと言うときに、 ……出掛けるってのか。 「だりぃ」 「駄目ですよー。お兄ちゃん、ハンパに夜行性なんだから。 「……じゃあ日向で寝るわ。おやすみ」 ぎゅいいぃぃ、と両耳を引っ張られた。とても痛い。 「駄目! 今日はこの服着ちゃったからもうお出かけ! 決まりっ!!」 横暴に打ち切って、またごそごそと何かの支度を始める。 ――休日だって? そんなもん、生涯夜行性の化け物には全く関係ない事じゃないか。 PR |
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