文章保管庫です
|
|
カテゴリー
カウンター
アクセス解析
|
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 「コレは、さっき入手したばかりの情報ですが」 カード型の携帯端末を取り出し、粗い画像ファイルを開く。 「例の件、やはり村雨キッカ1人によるモノではない、と言う裏付けが取れそうなんです。 興味を引かれたのか、彼女は解像度の低い複写画像を睨み付け、 「ちょっと待て。何でそんな機密をここで話すんだ? 私は一介の、」
「貴方に選択権はないんですよ、貴宮シズネ……いえ、『春日狂騒』」
私は、ぱらり、と手にしていた書物を開いた。 例の千十殺が残した偽りの世界記述――魔義が、瞬時にその固有概念を解放する。 「――なッ?!」 幾百の想念に裏打ちされた『固定』の因子が、彼女とその周辺世界を括る。 中空に跳ねる湿気ったお茶も、そのまま固定されて幾何学なオブジェとなった。 「仮にも、私は原姿教典の一節を預かる身。 くすり、と笑うと、彼女は唯一固定されていない口をパクパクと開けて、藻掻いた。 「――有り得ない」 口調は苦々しかった。 「均一化勢力が、何で吸血鬼の持ち物なんか使うんだ。アンタ達は――」 「ええ、今まで私達は、ヒト以外の霊長類に関して狭量すぎました。 「馬鹿言え! 純血種の人間が使うから、教会の武装は強力なんじゃないか。 「教義と心中するつもりなんてありませんよ。 ぐぐ、と。脂汗を滲ませて首を捻る彼女。 ……やはり、人間でなくなったヒトには、コレくらいの力では不足なのだろうか。 「――そうか。オマエ、もうその本に魅入られちまってるのか。 「さて、『旧友』貴宮シズネ。私達は貴方の存在を肯定します。 敵意の眼差しが、私を貫く。 「1つだけ」 「……はい?」 「1つだけ答えろ、羽佐間ヒカリ。『春秋一刻』を殺したのは、――オマエだな?」 私は答えない。ゆっくりと、首を傾げる。 「とぼけるなよ。アイツは、道端の吸血鬼に噛まれるようなタマじゃない。 「……よく解っていないようなので、もう一度説明しますね。 彼は、『最期まで』、立派な戦士でした。 己の理想に殉じるなんて、並大抵の人間には出来ませんものね。本当、尊敬します」 ……愕然とした表情。 信じたくはなかった、本当は否定して欲しかった。顔にそう書いてある。 面白いヒトだ。 ……人間に憧れて、人外の身でありながら教会の門を叩いただけのことはある。 眩しい。 そんな存在は、私の覚悟を狂わせる。 だから、 「返答を聞きましょう。私達に従うか、否か」 問いを発した。 彼女は、唇を噛みしめ、私を睨んでいる。 噛みきられた唇が震えて、直後、笑みのカタチに吊り上がった。
「くたばれ、偽善者」
私は微笑んで、自身の武装概念、『瞬刻閃空』を展開した。 PR |
|