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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 私は試しに浮遊してみた。 ……何と言うこともない、気まぐれに何か奇跡を起こしてみたくなったのだ。 その合間に、 「千枝ー、ぱんつ見えてるー」 というのんきな声。 下を見やると九九美が手を振り待っていた。 「どうしたの? 朝から空中散歩なんて」 「何て言うか、精神的ブルーデー」 「あらら」 頬に手を当て首を傾げる。 「来てから、もう一週間になるんだね」 右頬に幾何学模様を浮かべた親友は、ぼんやりとそんなことを言った。 「そうね」 気のない返事を返してから、私は呪うように回想する。
一週間前。 きっかけは、一ヶ月ぶりの牛肉入り鍋をひっくり返したとき。 見事に鍋を空中に静止させた私を、家族みんなが驚喜しながら祝ってくれた。 「で、おしるしは何処なんだ?」 父さんがほろ酔い気分で言った瞬間、私は自室の姿見まで全力で駆け上った。 顔、セーフ。背面、問題なし。両手足、オッケー。 私はイヤな予感と戦いながらブラを外して靴下を脱いで、 手鏡を使って覗いた先には……。
「ショッキングだよね、膣口なんて」 私は親友の後頭部にラリアットを見舞った。 メガネが割れる音と共に鮮血がアスファルトに沁みだしていき、 「いたーい」 無傷のままむくりと立ち上がる九九美。 「アンタも女なら気を使え」 「ごめんごめん」 ……まぁともかく、外部から見えないとは言えエラいところに付いたものだ。 私は凹んだ。超凹んだ。 「でも千枝凄いよ。そこにある人って凄く珍しいし、使役できる魔法も特Aクラスなんだよ?」 「いや、正直もう魔法とか要らないんで、私の青春返して下さい」 「じゃあ、さっさと卒業しちゃえば?」 「相手が居ないし、居たとしてもビビられる」 そう。そこがかなり問題だった。 資格を喪失すると、刻印は異界の炎で燃える。ボーボー燃える。5千度くらいで。 「一生モノだよねー、そこの火傷は」 「……つうか、絶対無理な気がする」 「一応、先先代の女王様は子供産んでるよ」 「え、マジ?!」 「うん。ドラゴンと契約して口からタマゴを……」 「解決になっとらんわっ!!」 私の拳骨が九九美のこめかみをえぐり、半身がコマのように回転して地面に伏す。 「いたーい」 「……燃えるような恋がしたいわ」 「否応なしに燃えちゃうけどねー」 がっくりしながら重い通学路を行く。 「ねぇ、千枝ちゃん」 「何さ、親友」 「これって、体液の純度で濃さが変わるらしいから、上手くすれば無傷で消せるかもよ」 ぴたり。今日初めてのまともな意見に、私は思わず足を止めた。 「ほ、ほんとっ?!」 「うん。実は……私も、ちょっと試してみました」 そう言っていつも隠してる右頬から手を除けた。 「す、凄いよ九九美っ! 裏技だよ! 抜け道だよ! 大発見だよっ!!」 「えっへん」 胸を張る親友。まぁ、私程じゃないにしろ、顔面と言うのもかなりキツイ。 「法王庁の資料見てみたらね、 「……盲点だったなぁ。なるほど口で、」 ふと。 「……誰と?」 私の問いかけに、にへりと笑う親友。 「弟」 「うわあああああああああああああああああああああっっ!!」 一線を越えた親友から、全力で飛び退く。 「あ、アンタ……あんな幼い子の将来を台無しに……」 「えー? 別にそんな大事じゃないよー」 ひらひらと手を振って否定する。 「キスぐらい」 ……。 ぱんぱん、と、膝の埃を払った。 「……まぁ、そうだと思ってたけどね」 「キスで将来は台無しなの?」 「私って、ほら、ピュアだから」 「どんな想像したのかなー」 にへり、と三日月型の笑みを浮かべる九九美。怖い。 「昨日の晩ね、ドロップあげて、唾を一杯溜めさせて、そのまま全部吸い出しました」 小首を傾げて衝撃の告白。 「結局一缶使ったから、舌が疲れてべとべとになっちゃったよー」 訂正。やはりモラルハザードだ。禁断の園だ。エロスの王国だ。 「別に同性でも有効らしいから、千枝ちゃんさえ良ければ私でも……」 「却下っ!!」 「何で?」 「私はノーマルなのっ!!」 「ふふふー、良いじゃなーい♪」 良くねぇ!! お互いに顔を掴み合い、とても不細工な面のまま魔力の渦が衝突する。 有り得ない方向にほっぺたが伸びている九九美。 「ふかーーーーっ」 「むまーーーーーーっ」 子供が見たら3日は寝込むだろう、言葉にならない精神戦が始まった。 そこに差す、黒い影。 グラサン、黒ずくめ、オールバックのその男は、私達が発生させた力場をほんの数秒で中和させ、 「――魔法局の者ですが」 PR |
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