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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 夜が好きだ。 この街の空は、晴れない。 ――ちゃり。 見ると、屋根を渡っていく子猫が見えた。 「猫さん猫さん、こんばんわー」 ……言って、ちょいちょいと手招きをする。 訳あって、この街の猫はとても賢い。 「おいでー」 ちっちっ、と指を振ると、猫さんはフンフンと鼻をひくつかせ、 ひゃう、と間抜けな声を出してしまうと、猫さんは1つ軽やかにバックステップをして、 寂しいなら、我慢しないで。 1人は落ち着く。 微かなユメ。 なー、と。 「キミも、ブルーベリーが好き?」 うなー、という低い返事。……うーん、どっちなんだろう。 ちょちょっ、と指先にジュースを付けて、鼻先に近づけてみる。 そうは言っても、お皿がない。
『環状線の悪魔』 『鏡面世界』 『千十殺』 『英霊拒否』 『腐蝕新呪』 【吸血朱】 村雨キッカ 報償 ――¥ 96,000,000.――
つまらないことを思い出す。 嫌な記憶を振り切るように、ボクはその間抜け面を裏返して、キッチリと折り目を付けた。 「すぐダメになっちゃうけど……、良かったらどうぞ」 たー、と青紫の液体を注ぎ込む。 だけど、数秒して。 ………………それを見て、気分が、悪くなる。 ふと、中空の月を見上げた。 アレは時に人を活かす恵みとなり、――時に夜族を導くしるべとなる。 「させないさ」 我知らず、瞳に力がこもる。 「4年後、この街の封鎖が解けるまで。……いや、それから後もずっと」 区切れた声は、凍えていた。 「ボクは全ての吸血鬼を狩る。奪われたモノを、取り返すために」 ――したた、と黒猫がボクの背を這い、ぺろりと頬を舐め上げる。 「ゴメンね、せっかくのお月見が台無しだ」 耳の後ろを愛撫してやると、目を細めて鼻をすりつけてきた。 「えと、さく……サヤちゃん、かな?」 お月見の相棒は、ただ喉をゴロゴロと鳴らしながら、うなーと一声。 もうニマニマしながら撫でてやっていると、不意に湿った鼻とボクの鼻がくっついた。 ……多分、さっきのジュースの所為だと思うけれど。 彼女の口からは、かすかに血の匂いがした。 PR この記事にコメントする
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