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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 電波橋、という愛称をどう思うだろうか。 言いづらい、カッコわる、何そのネーミングふざけてるの、など。 その名前が付いた理由は単純。 とにかくそこは、同年代の子達にとって格好の待ち合わせ場所になった。 日向のそんな景色が、ボクには遠い。 例えるなら……そう。 手掛かりはどこだ、どう歩けばいい――?
「あれ、アイちゃんじゃないですかー」 聞き覚えのある声に振り向くと、 「あ、サクラちゃんだね」 友達になったばかりの女の子が居た。しかも、何やら男連れのご様子。 「どしたの、こんな所で。……あ、ひょっとして、誰かイイヒトと待ち合わせなのかなー?」 くふふ、と嬉しそうに笑って肘を突っついてくる。 「痛ったーい! もー、これは乙女同志のコミュニケーションなんだから、 びしっと彼(お兄ちゃんか)を指さして、そう言い放つサクラちゃん。 結構難しい言葉知ってるんだなあ。意味解ってるか微妙だけど。 「で、アイちゃんは誰かと待ち合わせ?」 「え? あ、いや……そういうんじゃないけど」 「大丈夫だよ、言いふらしたりしないからー。ほれほれ、言ってみなさい?」 何かの映画のパンフをくるりと丸めて耳に付け、さあ! と促す。 「……やめとけ。困ってるだろが」 お兄さんが、今度はアタマをがしりと掴んで、ぐらぐらと左右に揺らした。 「すいませんね。コイツ、人との接し方がなってないもんで……」 お兄さんが申し訳なさそうに言う。 「あ、や、別に。それはお互い様ってことで」 こちらもぺこり。変な絵だ。傍から見て、どういう集団に思われているのか知りたい。 「むむー、じゃあ何しに来てたのー?」 納得行かない感じで、まだフラフラしてサクラちゃんが言った。 「んー、何かすごい曖昧な言い方しかできないんだけど」 「それでも良いから教えてよー。 ……う、妙にリアリティがある文句を聞いてしまった。 「あんまり……うまく言えないんだけどね。諦めきれないで、来ちゃうんだ――」
「――『探し物』を、探しに」
空に移した目をふと戻すと、仲睦まじい兄妹は、やはり仲良く……固まっていた。 あれ、変なことは口走ってないハズなんだけど。 「……ごめんなさい」 しかも謝られた。 「え、いや、何で?」 「だって今、アイちゃん、凄い目……してた」 ――――失敗。 どうも最近、感情のコントロールが上手く行ってないような気がする。 「あー、うん、ドライアイなのかも。季節柄」 ……二の句もまずい、か。 「ところで、2人はこれから何処行くの? 映画?」 「……それは、コイツが人混みにぐずったから却下。 お兄さんが代わりに発言する。 何だろう、すごいお兄ちゃん子ってのは解るけど、何か違和感がある。 「……怒ってない?」 ちょっと泣きそうな顔で聞かれたので、 「怒ってないよ」 極力優しい顔をしていった。ぱあ、と顔色が明るくなる。 ボクは嬉しくなって、彼女の頭をわしわしと撫でた。 その後お兄さんが 「何か迷惑掛けるかも知れないけど、どうかよろしく」 と言って、この場を去っていった。
*
2人と別れてから、しばらく後。 「――お嬢ちゃん」 ……いかにもな風体の怪しいおじさんが話しかけてきた。 「あんた、『冥想幻視』だろ? 吸血鬼狩りの」 顔はこちらに向けていない。 「例の環状線の件で情報がある。ヒトヤマ10で買わないか?」 「――あの件ならもう片づいたけど」 「違うな。あのお嬢ちゃんは正気に戻ったが、環状線の封鎖はまだ続いている。 見ると、モニタの端では、ジャイロを模した3D画像が静かに運動を続けていた。 ボクは、お財布から黒塗りのクレジットカードを抜き取り、おじさんに渡した。 「まいどあり」 ニヤリと笑って、おじさんはカードとA4サイズの封筒をボクに手渡した。 「先日、旧品川付近で起こった列車事故の様子だ。運良くカメラに収まってる。 ありがとう、と短く礼を言って、カードに付いた指紋を袖でふき取る。 カード式携帯を取り出して、アンテナを伸ばす。太陽に向かって。 「――おじさん」 ちょっと確認したい事があって、声を掛けた。 「今、ボクはどんな顔をしてるかな?」 妙な質問だと思ったのだろう。一瞬呆れたような表情を浮かべたが、 「どうもこうもない。それが殺し屋の貌って奴だろ――フリークスめ」 PR この記事にコメントする
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